宗祖日蓮大聖人御会式 記念法話「3つのギフト」

宗祖日蓮大聖人御会式 孝勝寺記念法話

~津波で生き残った禅僧の”いのちの話”~ 「3つのギフト」 岩手県一関市 籐源寺住職 佐藤良規師

平成30年10月14日11時より、孝勝寺本堂にて、檀信徒の皆様、ならびに、一般の参加者の前で、佐藤良規師の法話をいただきました。時折冗談を混ぜ、笑いを誘いながらも、自分のいのちとはなんであろう、自分の人生をどのように生きるべきかなどを考えさせられる内容でした。その後の御会式法要も厳修され、日蓮聖人の威徳をたたえました。懇親も楽しく、歌も飛び出し賑やかな会になりました。佐藤良規師の人柄をもう少し感じてもらうため、副住職との掛け合いトークも飛び出しました。別れの時には、握手をして皆が力をもらいました。来年も楽しめる企画を考えて皆様にお届けしたいと思います。

 お寺に生まれ育った自分ですが、僧侶にはなりたくなかった。僧侶はやらされるものではないとの考えからだった。ところが、29歳の時、住職であった父が亡くなり、周囲の皆にお願いされ、自分を納得し、住職の道を進むことになった。

 2011年の震災当日、前職の介護の仕事の講師として呼ばれ、釜石市にいました。講演が始まってすぐに地震があり、避難場所へ避難しました。ラジオから地元の一関市が震度6の放送を聞き、子供のことが心配になり、居ても立っても居られなくなり、車で帰る決断をした。

 釜石の街中で車が渋滞していて停車しているときに、津波に巻き込まれた。車の窓から屋根に上がり、隣にあった4トントラックに飛び移った。膝下まで水が満ちてきて、現実とは思えない光景が広がった。釜石市が水没し水面の上に立っているような状況だった。ゆっくりと水は引いて行った。トラックは電柱に引っかかりその場に踏みとどまることができた。第2波、第3波と津波は繰り返しやってきた。なんども「もうダメなんじゃないか」との気持ちと「まだ絶対に生き延びる」との思いが繰り返しやってきた。水位は徐々に下がってきて、第7波の時に地面が見えたので、飛び降りて高台に避難した。

 幸運にして助かったのだが、お寺に戻ると多くの人が「助かってよかったね。神仏の守護があったのですね」と喜んでくれたのですが、じゃあ、助からなかった人、助からなかった子供達は、2万人の犠牲者のいのちはなぜ護られなかったのか?その疑問で塞ぎ込んでいた。

 ある時、近所のおばあちゃんが来てくれて、顔を見た瞬間から涙を流して「和尚さん、生きててよかった」と言われた時に、本心から生きててよかったと思えるようになった。

 私たちが今日生きていて出会えるのは、本当に奇跡なんだ、不思議でありがたいことなんです。これが「1つ目のギフト」生きていることの不思議さです。

 震災後、気仙沼にて、一緒にお茶を飲みながらお話を聞くボランティアを週1回させてもらっていた。何もできない自分が、本当に感謝される。お坊さんは仏様に繋がっていると感じていただいていて、私自身が良いとか悪いではなく、ありがたく感謝されることを実感した。「二つめのギフト」は、自分のいのちが誰かの為に役立つのであれば、本当に嬉しいこと。自分のいのちを誰かにギフトすることができる。これが「2つ目のギフト」です。

 そして「3つ目のギフト」は、未来のためにいのちをギフトすることです。身近には子供たちです。子供達の未来のために行動することができること。籐源寺では、裏山を1000年後に原生林にするプロジェクトをはじめました。そして「はまわらす」という活動で、震災を経験した子供達に海で遊ぶことができるようにサポートする団体です。

 この「3つのギフト」を意識して生活すると、日常の色合いが変わってくると思います。

 津波に助かった私はスーパーラッキー僧侶なので、別れ際に握手をして実感を持っていただけたらと思います。本日はありがとうございました。

籐源寺住職 佐藤良規

質問:災害に対して、心の備えをどうしたらいいでしょう?

回答:当たり前のことではありますが、何に助けられたかというと、人の繋がりに助けられました。普段のお付き合いそのものがありがたいことに感じた。

質問:寺院や僧侶は災害に対しての備えや避難場所としての開放の仕方は?

回答:先ずは、住職が話しかけやすくないといけない。東北の震災の時にも避難して来た人を門前払いしたお寺もあった。お寺に避難した人は、仏様を感じて安心したとの声がたくさんあった。普段から一般の人が出入りできるような状態でないと、いざという時の選択肢に上がってこない。その点を考えて行くべきではないかと思う。

追記:参加者からの感想

【佐藤ご住職の「3つのギフト」の感想】

2018年3月11日に発生した東日本大震災で津波に遭い、トラックの屋根の上で、生死ギリギリの中で、助かったお話を通じて、「人生の価値」について、教えて頂きました。北海道でも、2018年9月6日に、とても大きな地震があり、身に染みるお話でした。また、震災後の気仙沼の子供たちに、海の暮らしを取り戻すプロジェクト「はまわらす」の活動や、厚真町で北海道東部胆振地震で被災された方々への傾聴活動「カフェ・デ・モンク」を行う話をお聞きし、感銘を受けました。今回のような機会を設けて頂き、とても感謝しています。また、次回も参加し、お話を聞きたいという気持ちになりました。

【孝勝寺の試みについて】

私は、『お寺に行く』ことに対して、興味がありましたが、なかなかお寺を訪れる機会がありませんでした。何かのきっかけがないと、なかなかお寺に入りづらい感じがして、躊躇していました。今回の法話は、孝勝寺で年6回行われている「断食会」を通じ、一般参加ができることを知り、参加させて頂きました。また、「寺cafe」などのコミュニケーションの場を提供していることも知りました。、気軽にお寺に行けて、お話を聞いてもらったり、法話を聞くことができる機会や場所がたくさんできると、とても良いと思いました。自分にとって、身近なお寺がそばにあると、安心が近くにあるという思いになります。